7月20日(木)に北見工業大学の地域未来デザイン工学科/バイオ食品工学コースの佐藤利次教授による「きのこと環境浄化」についての講義が行われました。参加者は1~3年生合わせて26名でした。その中の1名によるレポートを次に載せます。
前提 きのこと環境浄化することの関係は何か?
様々な成分を分解できる分解酵素を持つ
(きのこの分解酵素の)主にラッカーゼという分解酵素に目が向けられる
木材にはリゲインと呼ばれる物質が主に含まれる
リゲインは最も分解されにくい天然物質
が、ラッカーゼはリゲインを分解することができる
では農薬などの環境汚染物質を浄化でき
実験 RBBRとPolyP-478という2つの色水を脱色できると効果有り
結果:RBBRは透明に、PolyP-478は透明にはならずとも色は薄くなった
つまり
〈結論〉ラッカーゼには環境浄化機能がある!!
疑問 ではどうやってラッカーゼを入手するのか?
ラッカーゼはきのこが生える前に一番活性化する
菌床栽培、原木栽培に関わらず、きのこが生える直前に菌床(原木)の中で最もラ
ッカーゼが多くなる。
…この時にラッカーゼを採取しようとするときのこは採れなくなる。また、ラッカーゼを採取するのも技術的に簡単ではない
〈結論〉シイタケを上面栽培するときに出る廃水を用いればいい
理由:シイタケの一般的な栽培方法である上面栽培では廃水が発生するのだが、その廃水には微量のラッカーゼが含まれており、それを使えば簡単にラッカーゼを入手でき、シイタケの発育も阻害することがないため。
疑問 他のきのこからはラッカーゼを採ることは出来ないのか?
答え:上面栽培するきのこはシイタケのみで廃水を得ることが出来ないためシイタケ以外は難しい。
実際に使用 今のままでは廃水(以後上面水)は濃度が薄いため
「限外ろ過濃縮」というろ過方法を用いて濃縮上面水を生成
ろ過をしたら、ろ過した液体とろ紙に溜まった物質に分かれるが、液体は捨て、溜まった物質を上面水に戻す。この操作を繰り返すことで濃度を上げていく。これで上面水の100~200倍の濃度の濃縮上面水になった。
不法投棄事件があり、汚染されていた二戸市のある土地に使用した。
二戸市の土壌汚染の場所を土壌環境基準という土地の汚染度をはかる基準にかけると、
土1L当たり1mg以上の汚染物質が検出されると汚染されているという結果なのに対し、基準値の約370倍の369.5mg/Lが検出された
〈結果〉しかし、濃縮上面水を土壌に使用すると、369.5mg/Lから5.6mg/Lに基準値は届かずとも環境汚染物質を大きく減らした
まとめ シイタケから採取したラッカーゼは4℃以下で保存すれば100日経っても20%しか減少せず、長期保存が可能である。また市販のラッカーゼよりBPAという化学物質を減少させる効果が高く、これから先も様々な活用が期待されている。
<生徒の感想>
・今回、聞いたお話は普段日常生活で耳にすることは少なく、意識を持って調べなければ知ることはできないであろうお話でとても新鮮でした。自分は幼い時から『もやしもん』という菌を題材とした漫画が好きだったため、講義のテーマを聞いた時にはとても楽しみで、お話を伺っている最中もずっとワクワクしていました。全然知らないきのこのお話を聴くことができて、とても嬉しかったです。
研究職の大変さを講義後にさらに教えていただいたことで、また1つ自分の視野が広がり、自分の「好き」を追求していく研究者になるのもいいなと思いました。
・しいたけの上面水から採れるラッカーゼは、他の方法よりもコストがかからない上に、普段は捨ててしまうものらしいので、再利用にもなるし、いいと思った。ラッカーゼは色素を脱色できるし、透明な液体が緑や黄色になってすごいと思った。